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東日本大震災から10年 大地震から生活や事業を守るための備え

2021/03/25

 東日本大震災の発生から今年で10年。当時の教訓を忘れず、今後起こりうる巨大地震から個人の生活を守るため、そして会社の事業を継続させるために今できることを改めて考えておきたい。

 交通事故や空き巣被害などは日頃から注意を払っているのに、スパンの長い大地震についてはどこか他人事のように思ってしまう人もいるだろう。しかし、文部科学省によると、30年以内に個人が巨大地震に遭遇する確率は70%で、「交通事故で死亡」(0.2%)、「空き巣被害に遭遇」(1.9%)、「ガンで死亡」(6.8%)よりも圧倒的に高い確率となっている。
 実際、地震調査委員会は2009年、宮城県沖を震源とする大地震について今後30年以内の発生確率を「99%」と発表。そのエリアの大地震の平均発生間隔は約37年で、すでに前回の大地震から約30年が過ぎており、発表から2年後の2011年3月11日、東日本大震災が発生した。
 今後30年以内にマグニチュード7クラスの首都直下型地震が起きる確率は70%と言われており、南海トラフ大地震も活動期に入ったと考えられている。まさに、全国各地でいつ大地震が起きてもおかしくない状況といえる。

住宅の新築は平均2500万円 生活再建にもお金が不可欠

 大地震が発生すると、電気やガス、水道といったライフラインの被害が心配されるが、内閣府の防災情報ページによると、熊本地震の場合、電気と水道の復旧に1週間、ガスは復旧の完了まで2週間かかっている。
 また、交通インフラへの影響も避けられない。建物の倒壊や信号の滅灯などで深刻な渋滞が発生すれば、緊急車両の通行の妨げにもなり、救助活動や消火活動が遅れる恐れがある。電車が止まれば徒歩で帰宅する人たちが車道に溢れ、混乱がさらに激しくなることも考えられる。
 住宅が損壊すれば、修理や建て替えにかかる費用も大きな負担となる。内閣府によると、東日本大震災で全壊被害に遭った住宅の新築費用は平均して約2500万円。公的支援として受給できるのは善意による義援金をあわせても約400万円で、それだけでは住宅の新築費用にまったく届かない。
 しかも、生活を再建させるためのお金も必要だ。内閣府によると、東日本大震災で被災者生活再建支援制度を申請した人の45.5%が、生活再建に欠かせない家電・家具・寝具などを購入するために50万円以上支払っている。
 もし、建物1000万円、家財500万円の地震保険に加入していれば、全損時に公的支援金などと合わせて約1900万円の受け取りが可能となる。新築費用の2500万円には足りないが、それでも地震保険に加入しておくことは、日常生活を取り戻すための近道といえる。損害保険料率算出機構によると、2019年の地震保険附帯率は全国平均66.9%で過去最高となった。宮城県や熊本県では80%を超えており、地震保険は『生活を守るための必要コスト』という考え方が国民の間に広く浸透してきているのが分かる。
 一方、企業向け地震保険は、個人の地震保険より補償額も保険料も高額になるため、一部の大企業の加入が中心だった。しかし、最近は補償額を抑える代わりに保険料を安くした中小企業向けの地震保険も販売されており、こうした保険を活用することで、中小企業でも自然災害への備えが手厚くなることが期待されている。

震災3カ月後が倒産ピーク 事業を早期復旧させるカギ

 大地震によって事業が中断すると、最悪の場合、倒産につながる恐れがある。東京商工リサーチがまとめた「東日本大震災」関連倒産状況を見ると、東日本大震災の発生から3カ月後の2011年6月に震災関連倒産の件数がピークに達しており、震災後3カ月以内に資金ショートに陥る企業が多いことが分かる。
 地震保険の加入も効果的な対策だが、それだけで震災から3カ月間を乗り切るのは難しい。事業の早期復旧を実現させるため、緊急時にどのように費用を工面するかを考えておくべきだろう。
 例えば、金融機関の融資のほか、国・自治体の補助金の活用、売掛金の回収、万が一に備えた生命保険の活用などが挙げられる。また、現在契約している生命保険の解約返戻金の一定範囲内で貸付を受けることができる「契約者貸付制度」を利用するのもひとつの手だ。この「契約者貸付制度」は、現在のコロナ禍においても多くの経営者に利用されており、緊急時における資金調達の有効手段として注目されている。

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